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それくらい混乱していた。後々、落ち着いてきた後に生まれて初めてのキスにパニックと羞恥心で悶えたけれど。
なぜに佐野がキスをしたのか。
気まぐれ?いや、熱のせいだろう。
きっと、熱が出るとキス魔になるんだわ。
経緯を思い返してもそれしか行きつかなくて、そういう結論に達した。
だからといってキスされた事実は私の中にけっこう大きく残ってしまって。
次に会った時にどんな顔をすればいいのかわからない。
一番は何もなかったかのように振る舞うことだろうけど、私は不器用だから顔に出ると思う。
すると、モテてきた佐野のことだから「キスひとつで何意識してんだ」と呆れるわけだ。
その場面を想像すると虚しくて、結局避けるという行為に出るしかない。
幸いにも佐野からはあのキスのことについて何も触れてこない。
唯一、「水曜の夜、メシ行かない?」とメッセージが来たけど、ゆかりに誘われていたから断った。
正直のところ、ゆかりとの約束があったことにここまでほっとしたことはない。
「はぁ、何なのあんたたち。高校生か」
「だから、何もないって。たまたま、その、ふらついた佐野と私の唇が……」
「んなわけあるか!」
「あーもう行かないと、ほら」
長くなりそうな予感がして私はファンデーションケースをパチンを畳んでゆかりを急かした。
ゆかりは不服そうだったけど、ポーチにリップを仕舞って二人で化粧室を出る。
奥まったところにあったトイレから出て細い廊下を歩いた後、自分たちの個室のドアを開けると、にぎやかな声が一気に溢れ出てきた。
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