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「お前さ、男いねぇだろ」
「う……」
「ていうか、付き合った奴いんの?今まで」
「……」
エスパーか、お前は。
と突っ込みたくなるほど的確なツッコミに言葉が出ない。
繕おうにももう顔に出てしまっているから佐野は勝手にそれを解釈する。
「やべぇな」
嘆息交じりに言われて、プライドが傷つく。
そりゃやばいさ。わかっている、自分でも。
でも、仕方ないじゃない。
そういう機会に恵まれなかったんだから。
内心では言い訳のオンパレードだけど、佐野に言う勇気はない。
「な、内緒にしてて」
私に言うことができたのは懇願の言葉だけ。
私がどう思われようが、佐野の記憶の奥底に仕舞ってもらえればもういい。
美晴と大沢くんの結婚式には高校時代の同級生たちも来る。
佐野も大沢くんと同じクラスだったし、彼と同じバレーボール部だった。
変に言いふらされて、二人の結婚式で気まずくなるのは避けたい。
というか、美晴やゆかりに愛想を尽かされたくない。
「なんで?」
「なんでって、バラされるの恥ずかしいし、嫌だし」
「嫌、ね......」
佐野は呟くと思案するように視線を宙に彷徨わせる。
何か悪い予感がしたと同時に佐野の表情が緩んだ。
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