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「いいこと思いついた」
悪戯を思いついた子供のようにニヤリと口元を歪めた。
それから私を上から下まで眺める。
「お前なかなか悪くないし」
「な、なにが」
品定めするような佐野が理解できずについ声が低くなる。
弱みが握られたとはいえ、いくらなんでも失礼極まりない。
「ちょ、いい加減……」
「俺と付き合え」
「そう、付き合えって……は?」
今、なんと?
空耳かと瞬きをして佐野を見る。
でも、佐野は至極真面目な顔で続けた。
「だから、俺の女になんの」
その瞬間、持っていた鞄を盛大に落としてしまった。
それから、声にもならない悲鳴が胸の中で木霊する。
つ、付き合えって、嘘でしょ!?
目の前の男を穴が空くほど見たけど、冗談を言っている様子はなくて。
桜並木の花が舞散る中。
突然、現れた誰もが認める美しい男。
これが嵐の始まりだった。
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