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セックスなんてただの欲求。
確かに、ベッドの上で思いのままに身体を重ねている姿は動物みたいだ。
本能に身を任せてお互いを埋め合う。
生命を繋ぐ行為として備わっているもの。
そうだとしても、全てを持っていかれるこの感覚は彼だけだと思う。
経験値がないくせにそう思いたいのは、恋に落ちた女の幻想なのかもしれないけれど。
「唯」と耳から注ぎ込まれる優しい声に身体がますます熱を帯びていく。
「ん、あ……宗介くん……」
本能的に男を誘うように出る甘い声。
でも、彼の名前を呼んだ後、こんなに愛おしく、苦しくなるのは欲求だけじゃない。
一緒だといいな。
宗介くんもただの本能だけじゃなく、私のこと愛してくれていれば。
揺さぶられて、意識が焼き切れそうなほどの快感がじわじわと、でも確実に迫ってくる。
上も下もわからなくなるくらい、自分の意識が保てなくなる感覚が怖くて、目を閉じて拳を握り締めた。
その時、私の握り締めた手を宗介君の大きな手が包み込んだ。
ぎゅっと閉じていた瞼を上げる。
淡い橙の灯りの中、秀麗な彼と目が合って、握った手をそっと持ち上げられた。
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