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斎藤の部屋って……。
美晴の親友に最近紹介した部屋を思い出す。
築三十年のハイツ。
最近リノベーションしたから築年数よりかなり綺麗だし、暮らしやすいはずだ。
何か問題か?
俺は携帯を仕舞うと店に会社の車のキーを取りにいった。職場は自宅から近いから自転車通勤なのだ。さすがに斎藤の部屋まで自転車で向かうと少し時間がかかる。
何より、あのドスの利いた声は早く行かないとさらに機嫌が悪くなるだろう。
車を飛ばして十分ほどでハイツに着いた。階段を上って205号室のチャイムを鳴らすとドタドタと足音がして勢いよくドアが開いた。
「幸樹!」
眦を吊り上げた美晴が飛び出してきて思わず一歩退いた。
「あんた、ちょっとどういうつもり!?」
「な、何が?」
「悪いようにはしないだろうと思ってスルーしてきたけど、佐野とこそこそ企んで!唯を泣かすなんて許さないんだから!」
宗介、お前か......。
脳内にスカしたイケメンの顔が浮かび上がる。
賃貸の部屋でもなければ俺が問題でもなくて、少しほっとする。
でも、事態は収拾しないといけない。
目の前の恋人は般若のごとき顔で睨んでいる。
ここまでくるとちょっとやそっとでは収まらない。
「わ、わかった。説明するから中に入れて。斎藤も部屋にいるんだろ?」
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