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「なるほど」
俺はテーブルを挟んだ斎藤の向かい側に腰を下ろして話を聞き終えた。
まず、何から話そうかと頭の中で情報を整理しつつ天を仰ぐ。
「まず、今日は確かにあいつ引越しだよ。ずっと前から決まってた。だから斎藤のせいで早く出ていったとかではない」
「だ、だけど、一言もない。メッセージ送っても返ってこない」
「まだ見てないんじゃねぇの?」
「完全な既読スルーだよ」
「……あいつは根に持つと長いからなぁ」
決して真っ直ぐではない親友の性格を思うと納得もできてしまう辺りがつらいところだ。
斎藤はぐすぐす鼻を啜りながらまた俯いてしまった。
「何も言わないでいきなりいなくなるなんて……きっと私に呆れてどうでもよくなったんだ」
「それはない」
はっきり断言してやったら、斎藤が疑いの顔で俺を見るからため息が出そうになった。
宗介よ、全然伝わってねぇぞ。
「ぶっちゃけあいつほどお前を好きな男はいないぞ」
「うそ」
「嘘じゃないし」
「うそ!宗介君はモテるもん!私じゃなくてもいっぱいいるもん!そもそも『付き合おう』って言われてないー!」
そうしてまたテーブルに突っ伏して泣く。
なぜか片手に眼鏡が握られていて、フレームが折れてしまわないか心配になるほどぎゅーっと握り込まれていた。
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