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「び、びっくりしたねっ」
斎藤がぎこちない表情を浮かべて言う。
多分本人的には笑顔を作ろうとしているんだろうが、口元が引き攣っていて笑顔になっていない。
落ち着きがないようにスカートの裾を握り締めて膝を庇っている。
あの事件から、斎藤は膝が隠れる丈のスカートを穿いている。
あれから斎藤は相変わらず男は苦手だったけど、少しずつ笑顔も増えて、悪意がある噂も流れなくなった。
前のとおりに平穏な時間を過ごせるようになった彼女。
だけど、皆が膝上のスカートを穿く中で、野暮ったいそれを斎藤がやめることはなかった。
斎藤は制服以外も体操服も夏でも長ズボンだし、水泳の授業も見学していた。
どうしても半ズボンを穿かないといけない時はベージュのテーピングやサポーターをしていたけど、彼女はすごく居心地が悪そうに小さくなっていた。
人目のから必死で隠す姿は膝の傷だけじゃなくて彼女の心の傷の深さをも表していて。
元どおりだというには上部だけで、あの事件で負ったものは全然癒えていないのだ。
結局、あの時、俺は感情のまま大暴れしただけだった。
助けてやらねばという気持ちだけで、実際は何もできていない。
今だって、俺の自己中な考えから彼女を危ない目に遭わせた。
最悪、怪我を負わせるところだったのだ。
なにやってんだ、俺は。
激しい自己嫌悪に襲われて首を垂れると斎藤があわあわとしだす。
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