理想と現実

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「し、下着とかだから。私が後で片付けるね」 「わかった」 ゆかりは大して気にした様子もなくすぐに別の荷解きに取り掛かってくれる。 やばかった。 この中身はゲームソフトだ。 内容は恋愛シュミレーション。 いわいる、乙女ゲーム。 砕けて言えば特定の、または複数の男との恋愛模様を楽しむ娯楽物。 中学からのこの趣味を誰にも打ち明けてはいない。というか、バレたくない。 いい年してゲームが趣味、しかも恋愛物というイタさは自分でもわかっているからだ。 ゆかりが開けてしまわなくてよかったと胸を撫で下ろした時、インターホンが鳴った。 画面に映し出された初老の女性。大家の田中さんだ。 私は慌てて玄関脇の棚に持っていた箱を置くとドアを開けた。 「こんにちは、斎藤さん。どうかしら?片付きそう?」 「はい、もうすぐ終わると思います」 「よかった。大沢君の知り合いだから安心して入居してもらえるわ。彼ほんと色々気遣いしてくれてね。あ、このハイツに住む人たち変な人いないから安心してね」 大沢君というのは私の高校の時の同級生で、美晴の婚約者だ。 美晴と彼は昨年の同窓会で再会して付き合いだし、来月結婚する。 そんな大沢君は不動産会社に勤めていて、ちょうど担当がこの辺りらしく、私が物件探しをすると美晴から聞いてこのハイツを勧めてくれた。 大家さんとの交渉をしてくれたおかげで家賃も破格だったから本当に助かった。
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