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これは、ストレス溜まってそう……。
自分でも経験のある行動だけにピンときて、マグカップをテーブルに置いて斜め前の彼を窺い見た。
「向こうは大変?」
「うーん、まぁ異文化だから多少はな。今まで色んな国行かされたけど、日本が整い過ぎてて帰ってくると感心する。交通機関は時間通り、清潔、安全で飯うまいし、唯がいるし」
「わ、私?」
「そう、重要だろ」
思わぬ方向から褒められて、動揺した。
マグカップを持ったままだったら、お茶を溢していたかもしれない。
宗介くんは私と反対でいつものしれっとした顔。
彼は柿の種を咀嚼してお茶を飲むとマグカップをテーブルに置いた。
「こっちおいで」
小さなローテーブルの角を挟んで座っていた私を手招きする。
その声といい、優美な笑みといい、なんと甘美なものなのか。
耳も目も溶けてしまいそうになりながら、花に誘われた蝶のごとく私はふらりと立ち上がって彼の隣に腰を下ろす。
「違う、ここ」
すぐさま、間違いを訂正するように自分の足の間に私を引き寄せる。
後ろから抱き締められて私の心臓はすぐにバクバク音を立てて、あっという間に全身に熱を宿した。
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