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「さっき下の階の方には簡単にご挨拶したんですけど、隣の方は留守みたいだったので」
「あ、隣ね、多分お勤めよ。男の子なんだけど、あっ!『子』っていっても斎藤さんくらいの年齢でね。これがすごくイケメンなのよ」
大家さんが嬉しそうにムフフと笑う。
男。
その言葉に若干頬が引きつる。
話には聞いていたけど、そこまで若いとは聞いていなかった。大家さんは私の表情の変化に気づいたらしく、焦って手を振った。
「とても礼儀正しいし、いい子だから安心してね。私も家が隣だから何か困ったことがあれば相談してちょうだい」
「はい、ありがとうございます」
いかんいかん、男と聞いただけで。
所詮はお隣に住むだけの関係なのだから気にするほどでもないと自分に言い聞かせて、私はしばらく大家さんの世間話に頷いていた。
大家さんがひとしきり話して満足げに帰って行ったあと、再び片付けを再開して終わったのが夕方五時。
なんとか日が暮れる前に済んだとほっとして、私たちは空腹で鳴り続けるお腹をさすりながら駅前の居酒屋に入った。
「乾杯」
ゆかりと美晴は生ビール、私はお酒に弱いのでジンジャエールのグラスをカチンと鳴らし合う。
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