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「ごめんね、今日は休みの日に手伝ってもらっちゃって」
「いいのいいの、唯だって私の引っ越しの時手伝ってくれたじゃん」
私はアパレルの販売、ゆかりはCA、美晴はパティシエだから平日の今日に休みを合わせて手伝ってくれたのだ。
ゆかりが細く綺麗な手をヒラヒラと揺らすとその隣で美晴も頷いた。
「そうだよ、困った時はお互い様。本当なら幸樹にも手伝わせたかったんだけど」
「いや、大沢くんには物件探しから助けてもらったし、またお礼言わないと」
「いいよー、あいつだって仕事なんだし」
鶏肉専門の居酒屋だったので、鶏の薬膳鍋を注文した私たちは、はふはふ息を吹きながら会話をしていく。
四月に入ったとはいえ、夜はまだ肌寒いから鍋の温かさにほっと気が緩む。
だけど、流石に引っ越し蕎麦は居酒屋にはないからせめてシメは中華麺にしておいた。
「挨拶周りはどうだった？」
ビールを早くも一杯空けたゆかりは店員さんにおかわりを頼みつつ訊いてくる。
私は豆腐に息を吹きかけて冷ましていたところから顔を上げた。
「さっき下の階の人はいたよ。隣は留守」
「まぁ平日だしね。どんな人？」
「下の人は女の人だった。彼氏と住んでるんだって。隣は……男の人みたい」
「またその顔」
明らかテンションが落ちた私にゆかりが眉を顰める。
怒られるとはわかっていても、私はすぐ顔に出るらしい。
「あんたね、今年でいくつになる？」
「28歳ですけど」
「彼氏いない歴は？」
「う、お、同じくですが」
痛い質問が次々心に突き刺さる。
言いたいことはわかる。
案の定、ゆかりに盛大なため息をつかれた。
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