呪い

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志帆さんに導かれるまま、目の前のマンションに入る。 エレベーターで三階まで上がると、廊下を歩いてすぐの部屋に志帆さんは鍵を通した。 「散らかってるけど、くつろいでね」 「お邪魔します」 中に誘われて玄関を入ると廊下。 その先にある部屋の扉を志帆さんが開けると、私は思わず息を呑んだ。 そこはダイニングで、手前がキッチンで四人ほどが使えるテーブルとその奥に事務用のデスクが置かれていた。 ただ、その床は足の踏み場がないほど本や雑誌、洋服などが不規則に散乱している。 「作業明けのうえ、会食にすぐ出かけたから戦の跡状態なの」 真顔で嘆息を漏らす志帆さん。 正直、私の部屋よりこっちのほうが空き巣に入られたみたいだ。 陽光でほんのりと明るくなった部屋の惨状に固まった私をよそに志帆さんは足元の本を拾い始める。 我に返って手伝おうとしたら、すぐ手で制止された。 「私片付けるから、その間ルークを見ててもらえる?」 「あ、はい」 言われればルークもずっとキャリーバッグの中に入っているのはストレスだろう。 すぐにバックのチャックを開けてやると、ルークが待ってましたとひょっこり顔を出す。 それから辺りをぐるりと見回すと身軽にジャンプ一つで外へ飛び出してきた。 しっぽと耳を立てて私にひと鳴きすると、廊下を逆戻りしていく。 どこに行くのかと後をついていけば、廊下の途中の開け放たれた部屋に入っていった。 そこは洗面所で奥が曇りガラスだから多分お風呂みたいだ。 ダイニングと違って綺麗に掃除されていて、見回すとあまり物がない。 洗濯機の横にタオルと石鹸が洗面所に出ているくらいだ。 私が眺めていると、ルークが回れ右をして移動し始める。 今度は隣のドアに前足を置いて鳴く。 開けろという意味らしい。 ドアノブを捻るとそこはトイレだった。いたって普通。オフホワイトで全体的にマットやスリッパをまとめている。 てっきり志帆さんだからオールブラックかと思ったけど違った。 その次は向かいの部屋へ。またドアに前足を置いて鳴くので開けてやると、五畳ほどの部屋で資料やら『レツ☆プリ』グッズやらが棚に収まっている。 どうやら、ルークは私に部屋の案内をしてくれているらしい。
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