呪い

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「さっき大家さんから連絡があって三時過ぎくらいにガラスを交換してくれるって。買い物ついでに私が立ち会ってくるわ」 私がようやく一枚トーストを食べ終えたのを見計らったかのように、志帆さんもアイスティーを飲み干して言った。 そうだ、今日ガラスを交換してくれる手配をしてくれていた。 「私も行きます」 「大丈夫?立ち会うだけだからここで休んでいていいのよ」 「でも、私も部屋に……用事がありますし」 橋下さんと連絡を取らなければならない。 私が今一番にしなければならないことは指輪を見つけ出すことだ。 いつまでも休んでいる場合ではない。 「行けます。志帆さんこそ私のせいで寝てないんじゃ……」 「大丈夫。さっき仮眠したし、職業柄連続徹夜で仕上げるなんてザラだから慣れてるの。準備したらゆっくり向かいましょう」 黒縁メガネを外して、志帆さんが微かに口元を綻ばせた。
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