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「ああいうところって気後れする」
「その言葉が通用するのは25歳までよ。25越えたら
『可愛いからいてくれるだけでいいよー』なんて男は許してくれないんだから。
シンデレラだって、ただ待ってたんじゃなくて、自ら出向いて王子をものにしたでしょ?
待ってるだけでちやほやされる時期はもう私たちは終わったのよ」
ゆかりで終わったのなら私は既に墓場に埋まっているようなものだ。
私はすっかり冷めてしまった豆腐を口の中に放り込んだ。
「だったら、もう一人でいる」
「唯!」
「あーケンカしないで」
店員さんが持ってきてくれたビールを受け取りながら美晴が仲介してくる。
最近、ゆかりは特にそうだ。事あるごとに私に恋愛するよう勧めて、いや強制してくる。
行き遅れそうな娘を心配する親のようだ。
実際、うちの母親も似たようなことで電話をしてくる。
ほっといてくれてもいいんだけど。
私自身、彼氏が欲しいと望んでいるわけではないのだからと不貞腐れそうになった時、美晴が自分の鞄の中を漁りだした。
そして、取り出したのは手のひらに載るほどの小さな箱だった。
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