理想と現実

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「これ、唯にあげる。私とゆかりんから引っ越し祝い」 「え、いいのに」 「いいから開けてみて」 遠慮する私に強引に箱を渡してくる。 言われるまま箱を開けてみると、中には五百円玉ほどの大きさの透明な球体が収まっている。 「サンキャッチャーだよ。窓辺に吊るしたらキラキラして綺麗だから」 取り出してみたら、先についたクリスタルの他に等間隔に小さなクリスタルが細いリールに通されていて、店内の照明を受けてきらりとその身を輝かせる。 「アメリカではレインボーメイカーっていうらしいよ。縁起ものだから飾ってみて」 「ありがとう」 嬉しさに頬を緩ませてゆかりと美晴に礼を言う。 二人とも私のことを大切に思ってくれているからこそ、心配もするのだ。 否定されるとすぐ委縮して臍を曲げてしまう性格も直さないといけない。それこそもう子供ではないのだから。 新しい部屋に越したことで何かいいことあるといいな。 きらめくサンキャッチャーを眺めながらウキウキした気分になってくる。 「どうか唯に男ができますように」 「やめてよ」 ゆかりが呟きながらサンキャッチャーに手を合わせて拝みだしたところに店員さんが来たものだから、私は早々と箱の中に入れ直して鞄に仕舞った。
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