偽装

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「……店長、店長!」 不意に大声で呼ばれて体がビクッと跳ねた。 つい今朝の出来事を思い返していて呆けていた。 私が勤めているのは下着メーカー『fleur(フルール』。 その会社が出す店で販売員として働いている。 売り場に並べられた商品は目を引く原色のレースのものから、パステルカラーの淡い可憐なものまで。まさに女性のための美が集結された空間。 いくら私が恋愛に疎かろうと、ちゃんと女の子らしい可愛いものが好き。 その中でも下着が私のコンプレックスを克服させてくれた切っ掛けだから特別っていうのもある。 私の胸は成長期を迎えると同時に大きくなって世間一般的に大きいほうに入る。 大人になればそこまで気にしないことかもしれないが、思春期の頃はそれが嫌で嫌で仕方なかった。 男子からは胸のことであれこれ言われたこともあって、正直それが男が苦手な要因でもある。 十代は背を丸くしてなるべく目立たないように過ごす日々。 女友達は気にしなくていいっていうけど、やっぱり人の目が気になってビクビクしながら過ごした。
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