理想と現実

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四月一日。 桜舞い散る季節真っ只中。 「唯ー、これどこ置く?」 「あー、それはこっち」 友達の美晴が両手に持ったマグカップを示してきたのを、大皿を棚に仕舞いながら答えた。 今日は、私の新居への引っ越しだ。 新居と言っても築三十年は立つハイツだけど、職場異動とアパートの更新時期が重なったのを機に思いきって新しい職場の近くに引っ越した。 美晴は小柄な体躯でダンボールの間をぴょこぴょこ飛び跳ねて、こちらに持ってきてくれる。 「ほい」 「ありがとう」 「唯ー、これはー?」 美晴の後ろからもう一人の友人、ゆかりがリビングから顔を出した。 その腕に抱えらえた箱に私は受け取ったマグを落としそうになる。 「あー!それは!」 マグをシンクに置き、慌ててダンボールを押しのけてゆかりのもとに駆け寄る。 そして、半ば奪うような形で箱を受け取った。
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