魔女再来

2/34
3892人が本棚に入れています
本棚に追加
/1502ページ
「結論から言うと景虎様の仕業ではないですね」 相模さんは眼鏡をくいっと上げながら淡々と言った。 私はほっとしたのと同時に、また謎が深まった状態に不安に駆られる。 私の郵便ボックスに誰かが生卵を投函して一日が経った。 あの後、私は隣の大家さんの家に行って惨状を確認してもらった。 大家の老夫婦はひどく驚いて、すぐに警察に連絡。 警察署から一人のお巡りさんが来て、現場を確認しながら事情を聴かれた。 『何か心当たりはありませんか?』 私は答えようか一瞬逡巡して、首を横に振った。 景虎さんがやったという証拠もないし、憶測で物を言うのはやはり性に合わない。 突発的ないたずらかもしれないし、周辺の巡回を強化するということで、お巡りさんは写真を撮って帰っていった。 それからは大家さんと郵便受けの掃除。 しきりに心配してくれる夫婦にお礼を言って、部屋に戻った。 その頃にはもう時計の針が深夜の零時を指していた。 でも、疲労感は押し寄せてくるのに、どうにも寝付けない。 目を閉じれば、郵便受けの黄身と白身で汚れた中身が思い出されて、それを誰がしたのか、なぜなのか考え出すと、今も外からこの部屋を見張られているかのように思えて身震いがくる。 電気を消さずテレビをつけたままにしたけど全然気は紛れなくて、ベッドの中で縮こまっていた。 ようやく朝方うつらうつらと眠気が来たけど、ほとんど徹夜状態だ。
/1502ページ

最初のコメントを投稿しよう!