鐘が鳴る

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ホテルのロビーに入ったところで佐野の姿を探した。 大体着く時間を連絡したからここで待っているはずだ。 ぐるりと見回したのち、ソファに腰かけていた彼と目が合った。 「唯」 「そ、宗介くん」 立ち上がってこちらに駆け寄ってくる佐野に、何とか不慣れながらも呼び返す。普段履かない高いヒールに注意しながら私も歩み寄った。 「ごめんね、仕事が長引いちゃって」 「いや、大丈夫」 そう言って黙る。不自然な間に何だろうかと私が小首を傾げると、不意に視線を外された。 「会場、三階だから」 佐野はそのまま身を返すと先に歩き出した。 変かな。 場にそぐわなかったとか? 自分でも美人とは思わない。でも、今日は社長と蓮さんのおかげで少し変われた気がした。 絶賛まではいかなくても、佐野の「まぁ悪くはないか」という及第点の言葉がかかるかと思っていたのが甘かったみたいだ。 彼の後を追ってエレベーターに乗り込みながら不安と落胆に肩を落とす。
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