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私は今日もいつものように仕事に行く、いつものように働き、いつものようにみんなでランチに行き、いつものように定時で退社する。
そんないつも通りの日常の中に、いつもとは違う余韻に浸る時間が私にはできた。
少女の怯えた瞳、少女のくぐもった悲鳴、涙・・・
ナイフが少女の陶器のような美しい皮膚を切り裂く感触・・・
溢れ出る血液の匂い・・・
そのどれもが私をあのすばらしい時間へと一瞬で引き戻してくれる。
私はついに願いを叶える事ができたのだ。
幼い頃から妄想し続けた事を、ついに実現させたのだ。
虫やカエルとは違う、人間という動物をついにこの手にかけたのだ。
そして私が今までやってきた遊びとは違う、命にかかわるほどの拷問。
あぁ、はたして今ここにあの美しい少女を惨たらしく殺害した犯人がいるなんて、いったい誰が想像しようか。
まさか私があの事件の犯人だなんてここにいる誰も思わないだろう。
さながら私はジキルとハイドの様に、いつも明るく仕事ができて気配りもできる優しい上司を演じている。
今までこの陰惨で残虐な本性をあの少女以外の誰にも見せたことはないのだ。
私の両親でさえも、私が抱えるこの闇に気づいてはいなかっただろう。
むしろ気づかずに亡くなった二人は幸せだったのかもしれない。
私にも一応理性というものはあって、両親が生きている間は犯罪の類は一切犯したことがない。
なぜならば、万が一私が捕まるようなことがあった場合、欲望を満たして裁かれる私はいい。自己責任だ。
だが、私の親というだけで彼らにまで被害が及ぶのが嫌だったのだ。
そういう意味ではもし私に兄弟がいたり、両親がどちらも身寄りがなくなっていたりしなければ、きっとこの欲望を満たそうなどとは一生思わなかっただろう。
昨年、両親が交通事故で死んでしまった時、二人の遺体に対面した私はなんとも不思議な気持ちだった。
両親の死を悲しいと思う反面、傷だらけになった二人の遺体に胸が熱くなるような感覚を覚えた。
この二人の死が私に殺人鬼としての第一歩を踏み出させるきっかけになったのだ。
両親を火葬場で焼きながら、空に上っていく煙を眺めていた私は神様が私に人を殺せとそう言ってくれた気がしていた。
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