第1章

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昼間はうなうだるような暑さが続いていたが、朝方は比較的涼しく気持ちのいい季節だった。 その日も日の出とともに犬の散歩をする人やジョギングする人が緑地にちらほらと現れはじめる。 いつもの道に、いつも見かける顔ぶれ。 今日もいつもと同じ何気ない一日が始まるかに思われた。 一匹の犬が鼻をヒクヒクさせてふと立ち止まる。 犬を連れていた初老の女性も一緒に立ち止まる。 しばらく様子を伺っていたが犬はしきりに臭いをかいでいる。 いつもとなんとなく違う気がして、犬の視線の先を目で追った。 茂みの先に少し小高くなった場所が見える。 そこに誰かが横になってる。 最近この辺りにもホームレスがいると聞いたことがある。 しかし、ホームレスにしては妙に綺麗だった。 よく目を凝らして見てみると、どうやらそれは若い女の子のように見えた。 こんな早い時間にこんな所に女の子が・・・ 妙な胸騒ぎを覚えながら、女性はそっと茂みを抜けて近づいた。
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