第2章

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そう。 テレビでは言わなかった、いや言えなかった。 少女の体はベテランの鑑識官ですら驚愕するような異様な状態だった。 確かに着衣で覆われていない部分は全く外傷がなく、一見して他殺とは思えなかった。 しかし、死因を調べようと体に触れたとき、不思議な感触に一瞬戸惑った。 組まれていた手を解くと、ブラウスのボタンを外す。そこにはあるはずの膨らみ始めたばかり少女の乳房があるはずだった・・・しかし、乳房はなくなっていた。 乳房があったはずの場所は丸く切り取られ赤い筋膜が見えていた。 鎖骨にそって切られた左右の裂傷は、ぱっくりとその口を開けていた。 胸骨の下から臍にかけて大きく切られた傷口からは、何かキラキラした物が見えていた。 こんなにひどい状態なのに着衣に全く血痕が付着していないのには理由があった。 少女は死後に綺麗に洗浄されていたのも理由の一つではある。 だが更に少女の体は透明なビニール・・・ラップで覆われていたのである。 遺体はすぐに検死に回され調べられることになった。 少女の体をさらに調べると、背中には鞭で打たれたような傷があり、肩甲骨が剥き出しになるほど肉が削がれていた。 腹部からは臓器が綺麗に取り除かれ、代わりに大量のビー玉が詰められていた。 手足のつめは全て剥がされ、その上からネイルチップを貼り付けてあった。 担当した監察医も、検死に立ち会った刑事も、少女のあまりの状態に驚きを隠せなかった。 また検死が進むにつれ、犯人に対する怒りを憤りをつのらせた。 そして・・・全ての傷に生体反応があるとわかった時、その場に居た全ての人間の心に犯人に対する激しい憎しみが生まれた。
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