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同期で入社したあの頃、私と沙耶、それから冴木くんも同じ広報部に配属されて。
右も左も分からない私たちは、共に仕事をしていくうちに仲良くなった。
私がマーケティング部に部署が変わった今でもこうして毎日一緒に過ごしている。
唯一、あたしの心許せる友人だ。
「ほら、沙耶、ご飯続き食べよう?時間無くなっちゃう」
「ーーーーはあぁ…。もう…ほんと、まやはお人好しなんだから…。ちょっと!そこの若いの!!今回はまやに免じて許すけど、次は無いからね、いい?次また偉そうな口叩いたら…」
「っ、気を付けます!!」
ジロリと睨む沙耶の言葉の続きを飲み込むように、そう叫んだ塚田くん。その表情は真っ青で、怯えきっているのが目に見えて分かった。
「うん、ほら、塚田くんももう行っていいから」
「はい、あの、ほんとにすいませんでした!し、失礼しますっ!」
まだ疑いの目で睨み続ける沙耶をよそに助け舟を出すと、再び折れんばかりに体を曲げて謝罪を述べた塚田くんは、逃げるようにそそくさと歩いて行った。
「ーーー、さ、ちょっと冷えちゃったかもだけど、私たちも食べよう?」
そんな塚田くんから目を逸らし、自分のお弁当箱に視線を戻す。
気持ちが晴れているかと聞かれたら。ーーー、正直、晴れては、いない。
もうそろそろ潮時なのかな、なんて。毎日そんな事ばかり考えていて。
考えれば考えるほどに、迷いは募っていた。
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