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「ーーー…まや、アンタまた辞めるなんて考えてるんじゃないよね?」
先ほどの怒気含んだ瞳から一変し、沙耶の瞳は不安そうに揺れている。
「…あぁ、うん、…あたしね、もうどうしたらいいのかわかんないの…」
辞めれば楽になる、…でも。
辞めたら逃げた事になる、…そう。
考えれば考えるほど、迷路に迷い込んだように、答えは出ない。
「…ねえ、まや…今夜、空けといて。…話、聞くから」
そう言った沙耶は、小さく微笑んだ。
「今夜?え、だって、今夜はデートでしょ?颯太くんと会うって言ってたじゃん」
「うん、颯太と会うわ。でも、今はまやをひとりにしたくない」
「沙耶…」
今にも泣き出しそうな、そんな弱々しい顔をして。こんな表情をさせている自分が不甲斐ない…。
「颯太もね、まやに会いたいまやに会いたいって、いつも言ってるの。だってほら、まや、誘ってもいつも断るし」
「だって、あたしが一緒じゃ、デートの邪魔になるでしょ?それにあたしは大丈夫だから、ふたりで行っておいで」
「ダメ!今日は絶対、一緒に居る!!颯太に気遣ってるんなら、颯太に断るし。だから」
「分かった!分かったから、颯太くんも一緒でいい」
こうだと言い出した沙耶を止めるのは至難の技だ。
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