初めに

2/13
1人が本棚に入れています
本棚に追加
/26ページ
1.舗装されていない林道(夜) 秋の夕暮れが空を茜に染める。 ヘッドライトに浮かび上がる轍が続下りの林道。 大型トラックがギリギリ一台通れる舗装されていない道。 起伏が激しい。 軽トラックが中途半端に轍に載りながら、坂を下る。 電気自動車なのでエンジン音は聞こえない。 土と砂利を掴むタイヤの音がカーラジオの音楽をかき消す。 道の中央にいたイタチの目がライトを浴びて光る。 そのままサッと横切って逃げる。 目の前に舗装された林道との合流が見えてくる。 一時停止し、ウインカーを出さずに下り方向へとハンドルを切る正明。 2.舗装された林道(夜) 舗装されているが手入れはされていない林道。 ヒビ割れや雨水を逃がす溝が道路を横切る。 車が2台すれ違うのは難しい車幅。 カーブの向こうから対向車のヘッドライトが木立を照らす。 少し広くなったカーブで対向車をやり過ごすため、 スピードを落として路肩に寄る軽トラック。 パン、というクラクションと共に対向車が通り過ぎる。 いぶかしげに見る正明は薄い青の作業着。 普通サイズワンボックスの対向車の中はアベック。 軽トラックをスタートする正明。 対向車が来ていないのを確認し、少しだけカーブに突込み気味に入り、 薄っすらと砂利や砂が浮くカーブで軽トラックのテールを滑らす。 それほどスピードは出ていないが軽くスキール音が鳴る。 【正明】ん? 少し顔をかしげる正明。 カーブの度にヘッドライトに照らされる木立。 1人2人と人影が浮かび上がる。 サッと流れるヘッドライトの中に浮かぶ姿は、 男性が多いが、ちらほら女性も見受けられる。 時折木立の間に止まる車やバイクがある。 スピードを落としキツメのS字カーブを通り過ぎる軽トラック。 エスケープゾーンが広く見通しが良い。 山側は落石防止のコンクリートで固められており 木々の間から集まった水が小さな滝となって流れ落ちている。 そのまま、車が停められそうな木立にウインカーを出して ゆっくりと曲がる軽トラック。
/26ページ

最初のコメントを投稿しよう!