初めに

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3.木立の間1(夜) ヘッドライトを消す。闇に包まれる。 軽トラックから降りる正明。 虫達の声が聞こえ始める。 暗闇に目が慣れないまま、S字カーブが見えるところまで歩き出す正明。 立ち止まる正明。 後ろからシューという音が聞こえてビクッとする。振り返る。 4.木立の間2(夜) 虫除けスプレーを振りかけている男性。後ろにも2人の男性。 【正明】 何かあるの? 【モブ1】え、知らないのにこんな山奥に来ているのかい? 【正明】 仕事帰りなんだよ 【モブ1】ああ、だから軽トラなのかぁ。      こんな山奥で仕事ってかぁ。農業かい? 【モブ2】まぁまぁ、詮索は無しだよ。      えっとね、メックバトルだよ。もうはじまる。 【正明】 メックバトル?こんな山の中で? 【モブ2】ダウンヒルだね。 【正明】 玩具(オモチャ)のメックで? 【モブ2】なに言ってるんだい。玩具じゃないよ、スーツに決まってる。 馬鹿にする口調でも大声でもなく淡々と話すモブ2。 遠くから序々に大きくなるスキール音、 チカリチカリとヘッドライトに光る木立。 時には谷を挟んだ反対側の木々も光りの中に見える。 スキール音に混じって何かがぶつかるような音が聞こえる。 【モブ3】来たぞっ スキール音が大きくなる。 ヘッドライトが谷越えの先に見えるカーブの木立を照らす。 競り合う2台の二脚歩行型マシンが出現する。 インを衝かせまいとギリギリのインラインを走行する緑のボディ。 走行する姿はスピードスケートの選手のように見える。 足裏にローラーがあるのでスケートのような落ち着かない動きではない。 カーブに合わせて内足を前に出し、重心を載せる両マシン。 (時間差で同じようなポーズ) 外側の腕を大きく伸ばし、内側の腕は転倒に備えるかのように路面を撫でる。 カーブの切り替えしでフッと重心を抜き後ろにあった足を前に出す。 (時間差で同じようなポーズ) 後ろになった足は遠心力に負けまいと伸ばしきり ローラーがスキール音を立てる。      道幅が狭く、なかなかパスできそうにない後続の白いマシン。 インベタでカーブを切り返す緑のマシン。 追いかける白いマシンは遠心力に負けたかラインが膨らむ。 しかし。 白いマシンはグッと腰を落とし、路肩目指して走り、跳ぶ。 【モブ1、2】ヒュー! 口笛のような声。
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