エンスージアスト!

初めに

【正明】電線引いてもらえばいいじゃないっすか。
【職長】誰かが近くに住んでるんなら引いてくれるだろうけど、
　　　　ウチだけだしなぁ。

先ほど車ですれ違った同僚(二郎)と奥さんが
開いたままのドアから飯場に入ってくる。

【二郎】おはよーす
【同僚1.2．正明】おはようございまーす(同僚2:おはよーっす)
【職長】おー、おはよう

保温型弁当箱２人分と水筒２本を机の上に置く二郎。
ドアを閉めて奥さんが続く。

【二郎】気づいたんすけど、崖のコンクリに付いた跡、
　　　　あれ、なんですかねぇ?
【同僚1】え、そんなのありました?
【同僚2】ああ、なんか2本、線が付いてましたっすねぇ。
　　　　こんな山ん中であんなところ擦るような車は来ないだろうし。
　　　　てか、擦れないっすねぇ、あんな位置。
【正明】あー、あれですか。
　　　　昨日片付けして帰るときに付けた奴見ましたよ。
　　　　メックバトルとか言ってたなぁ。

ぱらぱらと興味無さげに漫画をめくりながら会話をうける正明。
視線は漫画に向いたまま。

【同僚2】え、正明さん、見たんすか!?
　　　　スゲー!!どんな感じでした?

興奮の面持ちで質問する同僚2。
同僚1も読んでいた漫画を放り投げて正明の話を聞きたそうにしている。

【職長】なんだそりゃ。
　　　　メックバトルなんざ、俺の息子が嵌ってたオモチャじゃねえのか?
【同僚1】いえいえおやっさん、そりゃ子供向けの話ですよ。
　　　　今じゃメックバトルは、エイドスーツに載ってやるんですから。
【職長】エイドスーツぅ?
　　　　なんじゃ、あんな骨みたいなのんびり動く奴に載ってやるんかい。
【同僚2】いえ土木作業とかに使う奴じゃなくて、
　　　　レース用にカスタムしてあるんすよ。
　　　　てかおやっさん、ウチもエイドスーツ買ってくださいよぉ
【職長】あんなん着て木に登れっかよ。
【同僚2】地拵えとか、刈り取ったの重いじゃないすかぁ。
　　　　 きっと楽っすよー。
【職長】やだよあんな重いの、動かなくなったら担いで
　　　　山降りりなきゃなんねぇ。
【同僚1.2】えー。

パンパン、と手を叩く職長。