ドワーフ

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 王を見送って、ドワーフ達が王家の物を作り始めたころ、ドワーフ達はダークエルフに何度か会った。  エントを探しにストレンジに会いに来た時、サラマンダーに土を分けてくれと頼みに来た時、ドワーフ達はどんなにかその背を押してやりたいと思ったか。あの時は、ただ見守ることしかできなかった。  ノームが戻ってきて、アースエルフとなった彼が果物をたくさん持ってきた時、ドワーフ達はやっと声をかけることができた。  けれど、彼らがかけた言葉はそっけないものだった。 「何もない森で暮らすのは大変だろう。ノームに鍵を預けている。あんたにやろう」  アースエルフはよく分からないまま、ドワーフ達にお礼を言い、ノームの森へ帰り、そのことを伝えた。そしてノームからドワーフの鍵をもらった。それは、小さな鍵だった。  まるで倉庫の鍵のようにシンプルで、鍵の頭に輪があり、そこに皮の紐が通してある。変わっていることがあるとすれば、それは細い枝が巻き付いてできた不思議な鍵だった。 「ドワーフは君のことを随分と心配していたから、いつか君に渡そうと決めていたんだろう」  そう言ってノームはアースエルフとなった彼に鍵を渡した。開けてごらん。ノームはそう言って扉を開けさせた。  アースエルフが地下深くに住むようになったのは、この時からだった。ドワーフの家は、深い深い土の中。今では出入り口は開いているけれど、アースエルフがはじめて開けた扉がどこにあるのか、それは当人達しか知らない。  ドワーフの鍵のことを知る者は、森の中でも数少ない。アースエルフ達、ノームの他には、森の番人であるエント、森の記録をとるコズエ、そのほかは、王家の者、もしくは王家に仕える一部の者達だけだ。  100年前、ストレンジ達はいつものように姿を消し、サラマンダーも遠い地に住むことになった時、彼らは物を作ることをやめてしまった。  けれど、ドワーフは最後に、王家の剣を完成させていた。月の光を集める、銀色の王家の剣だ。それを王子に届けたあと、ドワーフは森から姿を消した。  もうサラマンダーの山に行っても、陽気な声は聞こえない。けれど、彼らは今日も物を作っている。彼らの鉄を打つ音を聞いたのなら、幸福になれる。そんな言い伝えが生まれるほど、彼らは陽気に、愉快に仕事をする。 ーーさあ、私たちの仕事をはじめよう。 腕をまくり、鼻歌まじりに鉄が鳴る。 聞こえてくるはずだ。彼らは今も、進化し続けている。この森のどこかで。
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