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ムカデが一匹でると必ずもう一匹いると聞いたことがある俺は、小さなプライドを捨て去り、ムカデが真っ黒になるまで燃やすとそのまま実家に逃げ帰った。
数日後、実家に帰ることにした俺は、怪奇現象に興味深々の二人の弟をつれ、コーポに戻ったのだが、ここで嫌な予感が的中することとなる。
押入れの中を片付けてた時、四男の茂(しげ)が大きな声を上げた。
「慎兄! ちょっと来てよ!
すっげーもん見つけた」
浮かれているような声に、まさかお札でも見つけたんじゃないかと嫌々ながら近寄ると、茂は押入れの中に入り、上を見上げていた。
「あ、来た来た。ここからさ、変な音するんだよ。
慎兄気付いてた?」
押入れの天窓から?
「いや、全然……」
「きっとここに死体が隠されてるはず。開けていい?」
冗談じゃない!
楽しそうな茂を止めようとしたが、茂は返事を待たずに天窓を開けた。
そして次の瞬間。
ボトボトボトボトッ
記憶に残るあの不快な音をたて、黒い塊が無数に落ちてきた。
茂の頭の上に。
「う、うげーーーー! なんだよっ なんなんだよっ!」
悲鳴を上げ、押入れから転がり落ちた茂の体の上を這いまわるそれは、三十匹は超えていそうな大きなムカデだった。
リノベーションをされていたとはいえ築四十年。
天井裏は手つかずだったのか、それとも隣のお部屋が原因なのかはわからないが、俺の部屋の天井裏はムカデの巣となっていたのである。
子供か女性の声だと思い続けていたあの音は、ムカデの鳴き声だったんじゃないかと親父が言った。
今までムカデが鳴くなんて聞いたことがないし、正直どうだっていい。
ただ、あの首筋に感じた感触は一生忘れることはできないだろう。
それから半年後。
再び一人暮らしを始めることにした俺は、物件探しの条件に『新築』を加えた。
*終*
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