夜の声

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駅からは自転車を使って四十分。 町はずれの畑が多い場所に建っているのも俺的には好条件で、内見をしたその日のうちに審査の申請をしたくらいだ。 両親も兄弟も、なんでそんな不便な場所に、とか、もっと何度か足を運んで決めたほうがいいんじゃないかと言っていたが、反対されればされるだけ意地になって固執していった気がする。 鍵の交換や室内の清掃なんかで受け渡しまで時間がかかり、引っ越しができたのは入学してから十日ほどたっていた。 土日を使って荷物を運びこみ、日用品や家具を買い、貯金はあっという間に減っていく。 それでも俺の、俺だけの部屋が嬉しくて嬉しくて、暇な時間は雑貨探しに色んな店を巡った。 だから気付くのが遅れたんだ。 自分の部屋の異変に。
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