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最初は気のせいだと思った。
さて寝るか、とテレビの電源を消した時に聞こえてきた小さな声。
子供か女性のようなキーの高い声がぼそぼそっとなにかを呟いている。
二階建ての一階の角部屋に住む俺の隣人は、一人暮らしの四十代男性。
引っ越しの挨拶の時に、独身だと言っていたし、なかなか見事な汚部屋っぷりは子供や女性が一緒に住んでいるようには思えなかった。
いや、親戚の人が遊びに来ているという可能性はあるが、深夜二時を回って騒がれるのは迷惑だな、なんて考えつつその日は眠りについた。
しかし翌日も、俺の部屋が静かになるとどこからかその音は聞こえる。
時間は関係なく一晩中だ。
女性か子供かわからないが、眠りもせずに話続けているんだろうか。
言いようのない狂気を感じたものの、引っ越したばかりで隣人と揉めたくないし、俺は我慢することを選んだ。
今夜はきっと大丈夫だろう。
そう、根拠のない納得をして部屋に戻った俺の耳に、再びあの高い声が聞こえてきたのは言うまでもない。
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