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子供も、女もいない。
予想外の言葉に、その時の俺はかなり間抜けな顔をしていたんじゃないかと思う。
俺のことを憐れむように見る隣人の視線に耐えれなくて、すぐに部屋に戻った。
呆然としたまま、ずっと考えていたのはただひとつ。
じゃあこの声はなに?
なんて話してるのか聞き取ることもできないくらい小さなものだけど、絶えず途切れることなく聞こえる声。
子供?
女?
そんなもの存在しない。
この世に存在しないもの……
それがこの部屋にいるんだろうか。
オカルトなんて信じてなかった。
でも実際体験すると考えは変わる。
それからの俺は見えない、この世に存在しないものに怯え、部屋の電気を消すことができなくなった。
ネットで調べて見よう見真似で部屋の四隅に塩を盛り、友人に泊まりに来てほしいと片っ端から頼み込んだ。
反対を押し切って始めた一人暮らしだけに、親兄弟には死んでも頼れない、そう思って。
しかし、俺の話を聞いて泊りに来てくれるような奇特な友人はおらず、住み始めて二週間目にして、俺はこの部屋を去る事に決めた。
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