夜の声

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引っ越すといっても貯金はほとんど使い果たしたし、実家に戻るのは嫌だ。 でも心霊現象に耐えていける自信はかけらもない。 どこか友人のところに身を寄せるか……とベッドに座り考えていた俺の首筋に、ぼとっという音と共になにかの塊が落ちてきた。 冷たく、手のひらほどのなにか。 首筋にずしっとした重みを感じ、 「うわぁあぁぁっ!!」 と慌てて手で跳ね除けた。 落ちてきたそれは白い壁にぶちあたり、黒い筋を残してフローリングの床に転がり落ちる。 背筋をぞわぞわとした不快感が這い上がり、勢いよく立ち上がると両手で何度も首の後ろを払った。 一体なにが落ちてきたのか。 いや、それよりもまだ自分の体にそれが残っていそうで気持ちが悪かった。 泣きそうになりながら、一心不乱で体中を払う。 気持ち悪い。 気持ち悪い。 全身の毛が総毛立ち、心臓がバクバクする。 体に他の異常はない事で、少しずつ落ち着きを取り戻した俺は、意を決して首に落ちてきたものの正体を確認することにした。 生首だったりしたら心臓麻痺で死ぬかも。 などと思いつつ、覗き込んだそれは……
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