夜の声

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黒くぬらりとした体に無数の蠢く足。 オレンジの触角はうねうねと動き回り、15センチはありそうな体は俺の親指よりも太かった。 それは鎌首を持ち上げ、俺に向かって這いずりよる。 「う、うわぁぁぁあぁぁっ……」 近くにあった雑誌を手に取り、思いっきり叩きつけた。 何度も何度も何度も。 百の足を持つといわれている害虫。 ムカデに向かって。 これほどのサイズは今まで見たことがなかった。 このムカデが、俺の首筋に落ちてきたという事実がたまらなく気持ち悪い。 鳥肌がたち、冷たい汗が流れ、いつまでも全身で恐怖に震え続けていた。 やがて、冷静さを取り戻した俺は、このまま叩き続けていてもムカデを処分できない事に気が付き、キッチンから殺虫剤とキッチンバサミを持ってくる。 体を丸め、弱っているムカデに向けて殺虫剤を思いっきり噴射した。 そのままキッチンばさみで体をまっぷたつに切り分ける。 ここまでしてもムカデは死なない。 再びキッチンから割りばしを手にし、ムカデを掴むとガスコンロで燃やすことにした。 半分になった体を火で炙ると、一瞬、「きー」というような音が聞こえた気がした。 いまだ聞こえ続ける声だろうか。 でも、とても嫌な予感がした。
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