第1章

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「やっぱ‥うまくいく訳‥ねぇよ。」 バチが当たったのだろう。俺は裏切り者として、背後から斬られた。 意識が朦朧とする中、俺達の後ろに流れる川へ落ちてゆく。新八と左之の俺を呼ぶ声が遠く聞こえる。 「‥‥仲間が‥‥心配か?‥‥お前の持つモノを‥ひとつ奪う代わりに‥仲間のもとに帰してやる‥‥」 何処かから俺に語りかける声がする。だが‥そんな調子のイイ話があるはずが無い。 しかし、欲を言えばまたあいつらと会いたい。どんな形でもいい生き返りたい。 「‥どうせ、失いかけた命だ。なんでも持っていけよ‥」 「平助、無事かぁ~。」 俺を抱きかかえて、左之が鼻水を流しながら泣いている。そばには、新八の姿もある。 「あれ‥俺、生きてんだな‥」 閉じていた目を開き、月明かりの中己の命があることに気付いた。 そして、俺が失ったモノとは‥ 身につけていた刀と侍である自分。 侍として許されないボケをかました俺は侍として、武士(おとこ)として生きる道を失った。 「なぁ‥俺、これからどういきりゃあいい?こんなナリじゃあ屯所に置いてもらえねぇよ‥」 笑うしかねぇ。ボケたのは自分なのに、自分で笑うしかなくなる。 「馬鹿野郎。俺が娶ってやるよ。」 左之がまっすぐに俺の目を見つめ、真剣な眼差しで言う。 「左之ォ、お前、奥さんがいるじゃんよ。ダメダメ、俺にしときなって、平助。」 頬に涙が伝わってくる。どんな形でもこいつらに再び会えたことに感謝したい。そして、俺の居場所になってくれることにも。 「あんがとーな、二人とも。お前らにもう一度会えて、すっげえ嬉しいよ。」 新八と左之に手を引かれながら、夜道を屯所に向けて歩いて行く。 屯所に戻ったら、心配かけた近藤さんや土方さんに顔見せよう。
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