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誤解が解けないまま、夏休みになった。
帰宅部の私は、特に学校に行くこともない。必然的に晴くんに会うことができなくなった。
父親に頼まれて、お酒のおつまみを買いにコンビニの先にあるスーパーへ自転車で行ってきた帰り道、夏の夜風が穏やかに漂ってはどこかに消えていく。
「偶然って何度かあるもんだね」
「緒方先生」
マンションで自転車ごとエレベーターに乗ろうとする私を手助けして、開のボタンを押していてくれた。
「夏休みだからですか?」
「そうそう、実家帰省ってやつ。そーいえばさ、もう先生じゃないから拓巳くんとかそんな感じで呼んでよ」
「えっ、そんないきなりは無理です」
「いいじゃん、俺も新井さんなんて呼ばないし」
「勝手だなぁーもう」
2人の笑い声が混ざってエレベーターに響いた。ビーチサンダルでラフな格好なのに、同い年の男子とは何かが違うんだよなぁ。
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