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 「海かぁ……楽しそう!」  携帯の角を顎に当ててイメージする私。手の甲を滑るストラップは、まだお揃いにならない。  「あれ?それって修学旅行の?」  「そうです!お土産買ってきてないや……ごめんなさい」  「いや、そうじゃなくって、待受」  函館山のゴンドラで撮った写真は、あの日からずっと待受にしたまま。消すなと言われて、というよりも消してしまったら好きって言う前に終わってしまいそうで……誤解されたままで、卒業を迎えてしまうのは嫌なんだ。  「こんな風に笑うハル、初めて見たなぁ。あ、先に降りていいよ」  「ありがとうございます」  左右に分かれて、それぞれが家へ向かう。  振り返ったら緒方先生はもう帰っていたけど、お疲れ会の時に見た晴くんがそこに記憶の残像となって浮かぶんだ。  私は、こんな風に笑う晴くんをたくさん見てきたのに。どうして、緒方先生は見たことがないんだろう。
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