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しばらくして、晴くんがウェットスーツを脱ぎながら向かってくるのが見えると、先生は出番だとばかりにパラソルから出て、途中で晴くんと言葉を交わしてから、海に入って行った。
腰の辺りにだらりと下がる黒。引き締まった上半身に私は視線を逃がすタイミングを失った。
「あんま見んな」
着ていたパーカのフードを思い切り被されて、正面以外の視界が遮られると、置いてあったボーダーを手にいなくなってしまった。
見るなって言われたって、見ちゃうんだから仕方ないじゃん!晴くんが色っぽいからいけないんだもん。それに、見てるのは私だけじゃないんだからね。
……本当は、誰にもそういうの見せてほしくないのにな。
隣に座るなり、プシュッと音が鳴って、大人の晴くんは缶ビールをぐびぐびと飲み始めた。
「ん?なに?」
「な、何でもない!」
「お前には飲ませられないからな」
「……分かってる!」
お酒なんか飲んだことないし、飲みたいとも思ってない。
そうじゃなくて……目のやり場に困って、結局見つめてしまったんだ。
上下する喉元、そこを伝う水滴、瞳を閉じた横顔。
こんな晴くんを見たのは、初めてなんだもん。
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