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「つっかれたー……」
ぱたっと横になってしまった晴くんを見下ろす。両腕を頭の下で組んでいる彼は、相変わらず私の視線を集めては、逃がすタイミングを奪う。
気持ちも奪われたままなのに、さらに視線まで奪うなんて、晴くんはとにかく罪だと思う。
好きなのに、勝手に勘違いして、勝手にまた遠くなって。
目を閉じた晴くんをそっと見つめて、心の中で言うの。
『すき』
「なんか言った?」
私が慌てて首を振ると、晴くんはまた目を閉じた。びっくりしたぁ……心の声って聞こえないはずなのにな。
海風になびく髪にそっと指先で触れてみた。ただそれだけなのに、また鼓動の音が大きく鳴ってしまうんだ。
修学旅行の時みたいに、隣で横になりたいな。
パラソルからはみ出た足を曲げて、横向きになって晴くんを見つめる。学校の誰もが見たことのない距離から、見たことのない姿を焼き付けたいんだ。
波の音、砂浜で話す人の声、海の家から流れてくるBGM。
『晴くん、すきだよ』
今度は聞こえないように、心の声のボリュームを調節したつもり。
怒られるかもしれないけど……彼にできるだけ近付いて。
まぶたを閉じて、夏の海の音に耳を澄ませた。
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