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   「高校に合格したら、彼女にしてやる」  中学生になった頃、隣の部屋に住む晴くんに恋をした。  初恋だったんだ。恋愛感情がどういうものなのかって少しだけ分かってきた頃の、私なりにちゃんとした恋だった。  「約束、守るよ」    合格を伝えた私と、すでに遠くで大学生をしていた晴くん。カレカノになったけどあまり会えないし、夏休みだってサークルの合宿とか旅行、バイトで彼の予定はびっしり埋まっていた。  すれ違う毎日が積もって、連絡がしづらくなった。  だけど、ちゃんと自分の立ち位置を知りたかったんだ。  好きって、言ってほしかっただけ。  離れてても、私が彼女だって知りたかった。  晴くんを、信じたかったの。  意を決して作ったメールは機種変更した今でも、前の携帯の未送信フォルダにある。  電話番号が変わっているって分かったのに、晴くんの連絡先は消せないまま。  『大好きだよ。晴くんは、どう思ってる?』  私の事、嫌いになったの?  聞きたいことがたくさんあるんだよ。  高校3年の春、始業式。  新卒の先生として赴任してきた晴くんに、心の中で問いかけた。
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