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とりあえず犬をデフォルメしたモチーフになっているようだが、その胴体にたいして明らかに顔面がでかい、およそ胴体の2倍くらいだろうか。
ワニと間違えそうなほど大きな口は三日月型に曲がり、鋸(のこぎり)のようにギザギザの歯が口の端から端までズラリと並んでいる。
まるでどこぞの悪人ような面構えなのだが、これでも「ドッグレンジャー」と言う子供向けヒーローアニメ(コメディ)のマスコットなのである。
その証拠にこの犬は戦隊モノのヒーローが着ているような赤いバトルスーツを身につけて、どう考えても頭が入りそうにない大きさの同色のヘルメット小脇に抱えていた。
(それなりに苦労して手に入れた景品のはずなのに、どうにも愛着がもてない。)
ぶつぶつと考えながら帰路を歩く正志の頬に、突然何か冷たい液体のようなモノがぶつかった。
手で触れてみるとそれはなんのへんてつもない“水”、上を見上げると空を黒くてぶ厚いくもが隙間なく覆い隠していた。
まずいな~、なんて思ったのもつかの間。
次の瞬間にはバケツをぶちまけたような大粒の雨が降り注いできた。
「だーー、ちくしょう。なんて日だ」
今更ながら今が暦で言うところの梅雨入りであったの事を思い出す。
正志はずぶ濡れになりながらシャッターの降りた廃店舗の屋根の下へと駆け込んだ。
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