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「今日は散々だな」
屋根の下に逃げ込むまでに大量に水を吸った服が張り付いてひどく不快だ。
雨の勢いも空模様を見るにしばらくはこの勢いのまま降り続くだろう。
とりあえず時間を見ようとケータイを取り出した時、突然メールの着信を報せる着メロが流れ始めた。
「義隆?、なんだいったい」
それはクラスメイトで親友の相葉 義隆からのメールで、その内容は「自分を含む数人で勉強会をするから、そっちの寮にいく」と言うことだった。
どうやら学園からすぐ寮の方に向かっているようだ、ここからなら走って帰れば部屋を片付けるくらいの時間はあるだろう。
(まぁ、気心の知れたヤツばかりだろうから、部屋が多少散らかっていた所でそんなに気にする必要もないだろうが。
客を招く時の最低限のマナーだろう)
そうして正志が降りしきる雨の中に飛びだそうと覚悟を決めた、その時。
道の向こうから正志の非難している屋根の下に息を切らせて人影が飛び込んできた。
「あ!、失礼しますです」
そう言ってその人影は正志にペコリと頭を下げた。
「ん、いや、いいよ今出ていくところだったし」
頭を上げたのはランドセルを背負った小学校高学年くらいの少女だった。
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