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ロングの黒髪をみつ編みにして一本にまとめ、顔には丸メガネでなんともまじめな子というイメージだ。
メガネの奥にある少女の瞳は黒くてつぶらでまるで黒真珠のようだった。
「すごい勢いで雨が降ってますけど大丈夫なんですか、お兄さん?」
「ああ、大丈夫大丈夫。ここから走ればそんなかかんないから。
て、言うか、君の方は大丈夫なんかい?」
この雨の中を走って来たであろう彼女は当然全身びっしょりと濡れていて、このまま放置していけば多分風邪をひいてしまうだろう。
だからと言って温めるモノや拭くものが手持ちにはない、と言うか。
現在、正志も服の中や鞄の中までずぶ濡れになっている状態であるからして、手持ちにタオル類があったとしてもなんの役にもたたないのだが。
「いえ、心配にはおよびませんです」
「いや、およびませんです言われてもね」
こんな状態の女の子をこんな所に放置していくなど、正志の良心が許さない。
「ねぇ君、よかったらお兄さんのとこに来ない?
とりあえず拭くもんと温まるもんくらいあるから」
「いいえけっこうです。
知らない人に着いていっちゃいけないって言われているですから」
もっともだな。
たが、置いていく選択肢が自分の中にない以上。さて、どうしたものか。
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