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小学生しかも少女だからと言ってそれは変わらない。
しかも警戒を通り越して完全に敵意丸出しで噛みついているわけだから、その容赦のない痛みは言わずもがなである。
ゆえにその瞬間、正志の中で何かが音を立てて切れた。
「こっっっっの、クソガキーーーーーーーー……」
普通の人間ならこんな場合、噛まれている人指し指の痛みに思わず指を引き抜こうとするだろう。
だが
しかし
正志は違った。
少女の口から無理矢理その指を引き抜くのではなく、あえてさらに口の奥へ奥へと押し込んだのだ。
「ぐ、かは、げほ、げほ……」
突然、喉の奥まで侵入してきた異物に思わずむせる少女。
その隙に正志は素早く指を引き抜くと、少女の顎(あご)を中心に押さえ込むように口を塞いだ。
そしてそのまま少女に暴れさせる暇(ひま)も与えず空いている方の腕で少女を抱え上げた。
「むー、ぶー、ぐー」
「ハッハッハ、大人をなめた罰だ。風呂場で体の隅々まで洗ってやるぜー。
ヒャッハーーーーーー……」
こうして訳のわからない方向に勝手にキレた挙げ句に少女誘拐を実行したアホ(正志)は、どしゃ降りの雨の中を少女を抱えて走り去って行った。
しかも、ここが人通りの少ない商店街の外れだったのとこの雨のために、ここまで大胆な犯行であったにも関わるらず目撃者はいなかった。
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