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扉越しに聞こえた声と軽い金属同士が当たる“チャリッ”という音。
まずい。
今このドアを開けられたら最早、弁明の余地はない。
そう考えた俺はほとんどタックルをするように扉に飛びついて押さえ込む。
「いや~、そんな声どこからもしませんよ。アハハハハハ…」
「そう?、中からあなた以外の人の息づかいが聞こえるんだけど、気のせいかしら~」
寮母様は1㎞先の針が落ちる音さえ聞き取れる聴力の持ち主だと聞いた事があるが、あの噂は本当だったのか。
つーか、どんだけ耳がいいんだ。
「林堂く~ん、もう観念して中に入れなさ~い」
寮母様がついに本腰を入れて扉を叩く。
だがどんな力で叩けばこうなるのか、扉越しに今にも吹き飛ばされてしまいそうなほどの衝撃が伝わってくる。
すぐに扉に背中をつけて体全体を使って扉を押さえるが、どう考えてもこのままでは後がない。
脱衣場・浴場どちらにも外へと続く扉や正志が這い出る事ができるような大きさの窓はなく、もう残された手段はもう投降以外にはないのだが。
そうするにしても問題がある。
それは彼女だ、ただでさえ女性が出入り出来ない場所だと言うのに、無断で連れ込んだ事実に加えてバスタオル1枚という現状を見られればどんな目に会わされるかわかったものではない。
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