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ついに僕も精神病院デビューかなんて嘲笑った。
前々から予測はしていた。何度も自殺を図る内に、母さんが電話で誰かに相談していた事。
“評判の良い精神病院はないか?”と。
母さんの重荷になっているんだと気付いたから、屋上から飛び降りた。今度こそ、失敗しないように。
それなのに、失敗した。だから、今僕は病室に居るんだ。
「秀生、入るわよ」
考え事の最中に母さんは扉を叩いた。かすれた声でいいよと承諾すれば、母さんと白衣を着た男性が中に入ってきた。
「やあ、初めまして。僕は君の担当になった柏木“カシワギ”だよ」
よろしくねと好印象を持てる笑みを浮かべた男性。どうやら、この柏木って言う人が僕の担当医らしい。
「あ……はい」
ぺこりと軽く頭を下げると、柏木は母さんに2人っきりにしてほしいと頼んだ。母さんは言う通りに病室から出た。
柏木が僕の近くにあった椅子に腰掛け、困ったような表情でこちらを見つめていた。
理由は分からないが、なるべく、そんな顔しないでほしい。現実から逃げ出したくなるから。
「それじゃあ、ちょっと心音を聞かせてね」
首にかけていた聴診器を耳にはめ、音を拾う箇所を僕に向けた。服の上から聴診器を当てる柏木。僕はそれを見守る。
「……うん、問題無いね。指は動かせる?」
僕は柏木に自分の手を見せ付けて、ゆっくり開いたり閉めたりを繰り返した。無論、両手とも出来た。
その後、足が動くか視力に異常がないか呂律が回るかなど、様々な身体検査をした。正直、面倒だなぁなんて考えてた。
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