人生リセットボタン

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……少し、眠ろう 誰も居ない部屋は静けさだけが僕の隣に纏わりついている。なんだか寂しい気もするが、今の僕にとっては心地の良い静けさだ。 ……あ、そういえば あの男性から貰った小さなモノ、どこに行ったんだろう。無くしてはいけないと言われたからか、無性に気になった。 近くの机を見ても、それといったモノは見られない。ここに搬送される際に無くしたんだと思った。 「……しょうがないよね」 「おはよう秀生くん!調子はいかほどに?」 突然、誰も居ない部屋から僕以外の声が聞こえた。驚いて、部屋を見渡すが、人影は無い。だが、その声は聞いた事のある声だ。 「さて問題です!僕はどこに居るでしょうか!」 まさかと思って、くまなく部屋に視線を運んでいると僕の手の甲をツンツンとつつく感覚を感じた。ゆっくりと視線を下ろしていくと、隠れるように膝を抱えて無邪気な笑顔を浮かべるあの男性が居た。 「?!ど、どうして!?」 眼を丸くして、ここに居る男性に対し疑問を持つ。男性はえへへと嬉しそうに声を零し 「無事かなーって思ったから、お見舞いしに来たんだ」 などと言ってきたので、僕は頭が痛くなった。どこから入ってきたのか、どうしてここに居るのか。とにかく、頭の中で疑問が飛び交ってごちゃごちゃに混ざる。 「まぁ、万が一って事で様子を見に来たんだけど、元気そうでなによりだよ!」 男性は立ち上がって、僕の身体を見下ろす。なにが元気そうだ。実感は無いけど、これでも2ヶ月は眠っていたんだぞ。 皮肉を言ってやろうと思ったが、被せるように男性がまた口を開く。 「後遺症とかあったら面倒でしょ?だから、損傷が激しかった頭蓋骨と脊髄は治してあげたよ?」 「……え?」 偉いでしょ?と男性の思わぬカミングアウトに、唖然とする僕。 治したってなに?ってか、いきなりなにを言い出してるんだ。おとぎ話じゃあるまいし。そうやって、僕をからかって楽しんでいるんだ。きっと、そうだ。
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