人生リセットボタン

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「おいおい……まさか、父さんを抱き枕かなにかと間違えてる訳じゃないだろうな?」 父さんは僕の頭を撫でながら、呆れたように呟く。僕は一度深呼吸をし、笑みを浮かべて父さんを見る。 「そうかもね!」 「あ!お父さん、早く朝ご飯食べて!会社に遅れるわよ!」 母さんが慌てた様子で父さんに食事を促す。僕は名残惜しい気を押し込め、父さんから離れた。父さんは大丈夫だよと言いながらテーブルに座り、用意された朝食を口にした。 同じように僕もテーブルに座り 「……ねぇ、僕の分は?」 僕の朝食が無い事に疑問を感じながら、母さんに尋ねてみる。 「大丈夫、あるから心配しないの」 そう笑いかけてくる母さんの表情が眩しく見えた。父さんが死んでから、笑わなくなってしまった母さん。その母さんが今笑っている。新鮮だが懐かしい。 僕の眼の前に置かれたのは、フレンチトーストとベーコンエッグ。 「さぁ、2人共急いで食べなさい!」 僕らに喝を入れる母さん。僕は置かれた朝食を胃に詰める。父さんはのんきに新聞を読みながら、お茶を啜っている。 「お父さん!!」 「!?」 母さんの声に驚いて、父さんの肩が跳ねる。相変わらず、父さんはマイペースな性格だなぁとクスクス笑いながら、僕は牛乳を流し込む。 テーブルの陰から、ミケが物欲しそうに父さんを見つめている。それに気付いた父さんはミケの前にそっとウインナーを置く。動物好きなのも変わっていないみたいだ。 そんな事をしている内に僕はフレンチトーストをペロリと平らげた。 「ご馳走様ー」 「は、早いな秀生……」 「え、父さんが遅いんだよ」 「いや、そんなハズは」 「いいから、早く食べなさい!!」 「……はい」 シュンと落ち込む父さん。この家族のやり取りがあまりにも懐かしい。僕は皿を片付けて、部屋へ戻った。 本当に……戻ったんだっ! バタンと閉めた扉に凭れて、嬉しさと喜びを噛み締める。改めて、煙理に感謝する。 「でも……」 このまま、同じ日常を過ごせば、父さんは交通事故に遭うのでは?僕がどうにか出来る事なのかは分からないが、なにかしらアクションを起こせば、未来が変わるのでは? ぐるぐると思考が回る。父さんが死なない方法を探さないと。 「もし、駄目だったら……」 その時は、また煙理に力を貸してもらおう。
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