3人が本棚に入れています
本棚に追加
廊下を走ったのを先生に見られた僕達は、その後、長い説教を貰ってしまった。俊まで巻き込んでしまった事に罪悪感が湧く。
視線を俊に送り、ごめんと小さく呟くと俊は微笑してくれた。
説教から解放されて、2人して教室に入る。幸いにも、1時間目は自習だったので遅刻にはならなかった。
「あのハゲ、話長いんだよ!」
俊が不満を振りまきながら、一番前にある席に座る。僕の席は窓際の後ろなので、直接話すにはどちらかが相手の席に近付かなければならない。
まぁ、今は僕が俊の机の前に立っているから、そんな事どうでもいいけど。
「ってか、秀生!元はと言えば、お前が俺の足を踏んだのが原因だ。罰として、ノート写させろ!」
「言ってる事がおかしいよ……。だいたい、僕の頬を引っ張った俊が悪い」
僕が腕を組んで、眼を細めると俊は黙った。僕が言った事に反論する言葉を探しているのだろうか。
「あ、あれは……い、いつもの挨拶だろ……」
狼狽える俊に僕は溜め息を吐き出した。そして、一言
「ふーん……。謝らないなら、ノートはもう見せない」
「え!?お、俺が悪かったです!ごめんなさい!!だから、ノートはっ、ノートは写させて下さい!お願いします!!」
……必死だなぁ……
机に頭を強く打ち付ける俊。必死なのが伝わった。
だが、必死に謝るのは良いけど、クラスメートがクスクスと笑っているのも気にしてほしいものだ。他のみんなは、僕と俊のやり方に馴れているから面白いんだと思う。
「はい、良く出来ました。でも、僕は課題やるね」
ひらひらと手を振って、そのまま俊を放置する。僕の席である窓際の席に座り、外を眺める。
直視出来ない太陽、流れる雲、飛んでいる鳥の群れ、そして窓に写る幼い僕。
巻き戻した時の中、今は父さんが死なない方法を考えよう。僕は自習の時間をそれに費やした。
最初のコメントを投稿しよう!