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それから、時間はあっと言う間に過ぎ去り、放課後になってしまった。結局、父さんを助け出す方法が思い付かなかった。
どうしよう……、このままじゃ……
表情に影を落とした時
「そんな暗い顔してたら、幸せが逃げっぞー!」
俊が僕の頬を引っ張りながら、ニヤニヤと笑いかける。先程よりは力加減をしているみたいだけど、なんで学習しないんだ。
僕はキッと睨み付けた。
「やめろ、俊。大事な考え事してるからさ……」
「へぇー。この俺に相談してみろ!パパッと解決してやるぜ!」
俊はパッと手を離して、僕の前の椅子に堂々と座った。そして、頬杖をつきながら愛想の良い笑いを浮かべる。
その親しみやすさにつられて、僕は口を開いた。が、すぐに言葉を失う。
……なんて言えばいい?僕は時間を遡ってきたんだ?……
「……あ、えーっと……」
煙理は誰にも告げ口するななんて言ってない。でも……未来から来たなんて、言ったところで信じてくれるのかな……?
悶々と頭を悩ませていると、俊が教室の外を見て、あっと声を出した。
「悪りぃ!部員が俺を待ってるみたいなんだ!明日、相談に乗ってやるから、またな!!」
俊は重たそうな音を鳴らすセカンドバッグを肩にかけ、急いで走り出す。俊にとって、今部活は大事な時期を迎えている。なにせ、大会が近いのだ。
「……はぁ」
助かったような機を逃したような、なんとも言えない気持ちに溜め息が洩れる。
「……帰ろう」
なんだか疲れてしまった。とりあえず、家に帰ってからまた考えよう。
使い古したリュックを背負い教室を後にした。
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